奇妙な果実 ーStrange Fruitー

   

先日やっと小遣いが入ったので、CDを買いに行った。
もちろん、Jazz。
CDショップで悩んで買ったのが、この3つ。

Miles DavisのBags Grooveは、iTSのオーディオブックで買った 水城 雄 - 誰も教えてくれなかったジャズの聴き方
誰も教えてくれなかったジャズの聴き方
で解説されていた曲で、じっくり聞いてみたかったし、 トゥーツ・シールマンスもこのオーディオブックで登場したアーティストで一度聞いてみたかったのである。
( トゥーツ・シールマンスは、ハーモニカのジャズプレーヤーでこの人の音楽は心が温まります)


今までは、ジャズは聴いていたものの、ジャズについて深く掘り下げて考えてみたこともなく、最近になってちょっと勉強してみようと思いだした。
前述の 水城 雄 - 誰も教えてくれなかったジャズの聴き方「誰も教えてくれなかったジャズの聴き方」は、とても分かりやすく解説されていてお勧め。
1900円もするがそれだけの価値はあった。
またも買ってみようと思っている。
しかるに初心者にとって最適な解説書がそうそう見つかるわけもなく、また漫然とアルバムの曲を聴いているだけでは、そのアーティストやプレーヤーの背景にあるものは見えてこない。
そこで重要になってくるのがCDやレコードの歌詞カードと一緒に付いてくる解説である。
初めてのCDやレコードを聴くときにこの解説を読んでから聴くと、曲に対する理解が深まって興味深い。

☆ Left Alone


このレコードは、波瀾万丈の人生を歩んだ黒人女性Vocalistビリー・ホリデーの死を悼んでピアニストマル・ウォルドンがレコーディングしたアルバムである。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から
http://ja.wikipedia.org/wiki/ビリー・ホリデイ
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ビリー・ホリデーの晩年、彼女の伴奏をしていたマル・ウォルドンは彼女から多大な影響を受けた。
元々タイトル曲の「Left Alone」はビリー・ホリデーの書いた詩に、マル・ウォルドンが作曲したもの。
このアルバムでは、Vocalの旋律部分を気心の知れたアルトサックス奏者ジャッキー・マクリーンに吹かせている。
彼女の追悼アルバムに他の女性ボーカリストを持ってくるのは違和感があったのであろう。
しかし、私のようにこのアルバム(アルトサックスの曲として)で「Left Alone」を知った者にとっては、レコードの解説を読んで、初めて知った事実であった。
ちなみにビリー・ホリデーが歌った「Left Alone」は、レコードとしては残っていないそうである。
ジャズでは、Vocalも楽器の一種として扱われるため、こういうケースは珍しくない。
つまり、ジャズでは Vocalでもアドリブすれば、他の楽器とセッションもする。
(ビリー・ホリデー 1959年没)

leftalone.jpg
Left Alone
Where's the love that's made to fill my heart?
Where's the one from whom I'll never part?
First they hurt me, then desert me
I'm left alone, all alone
There's no house that I can call my home
There's no place from which I'll never roam
Town or city, it's a pity
I'm left alone, all alone
Seek and find they always say
But up to now it's not that way
Maybe fate has let him pass me by
Or perhaps we'll meet before I die
Hearts will open, but until then
I'm left alone, all alone
岩浪洋三氏による意訳
私の心を満たす恋は何処にあるのだろう。
私から離れないでいてくれる人は何処にいるのだろう。
みんな私を傷つけ、そして去っていく。
私はいつも淋しく独りで残される。
自分のものとよべる家もなく、とどまっていられる場所もなく、悲しいかなそんなところは街にも都市にもなく、私はいつも淋しく独りで残される。
みんなが言うとおりに探し求めても、今まで実現したこともなく、愛する人は去りゆく定めなのか、私は心を開いて待っていよう。
私はいつも淋しく独りで残される。

☆ 奇妙な果実

マル・ウォルドンが1966年録音した彼のソロアルバム「All Alone」のレコードの解説を読んでいたら、マル・ウォルドンのこういう言葉が書いてあった。
「彼女は心の温かい思いやりのある人であった・・・、私はビリーの歌い方からフレーズの作り方を学んだ」
つまり、彼女(ビリー・ホリデー)は、マル・ウォルドンの良き師匠だったわけである。
マル・ウォルドンも黒人があるがゆえに米国で評価されずに苦しんだアーティストであるが、考えてみればこの時代に活躍したジャズプレーヤーは、黒人が多いと言おうか、ほとんど黒人である。
マイルス・デイビス、ジョン・コルトレーン、カウント・ベイシー・・・数え上げたらキリがない。
そんな黒人差別の悲惨さを伝えたのが、ビリー・ホリデーが歌うことになったBillie Holiday - Strange Fruit奇妙な果実(Strange Fruit)である。
あまりに強烈な歌だったためにいろんな波紋を呼んだようだが、こういう人種差別の事実があったことは彼女の歌声と共に忘れてはならない事実であろう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/奇妙な果実
↑から一部抜粋
『曲のタイトルにもなっており歌詞中で言及される「奇妙な果実」とは、リンチを受けて絞首刑に処された黒人の死体のことであり、この果実がマグノリア(ルイジアナやミシシッピの州花)のような屍臭を放ち風に揺られているという「牧歌的な光景」を歌った詩である。あまりにも陰惨な詩なので、ビリーも最初に歌ったときは失敗したと思ったという。歌い終わってもはじめは拍手一つなかったが、やがて一人の客が拍手をしはじめると、突如として客席全体が割れんばかりの拍手に包まれたという。』
Strange fruit Billie Holiday

たった1つの歌、アルバムからもこんなに広がりがあるストーリーが展開されるのである。
iTSでも歌詞はもちろん、こういう解説もPDFファイルとかでアルバムの購入者に対してサービスしても良いのではないだろうか・・・
(英字の解説がある曲はあるが、日本語の解説がある曲は皆無である)


この記事を書いている最中に、ビールが飲みたくなって近所のスーパーへ同種の飲料を買いに行っている間に、嫁さんとその一族(娘達)は習い事へ行ってしまった。
小生ビールを買って帰ってきたのはよいが、家の鍵を持っておらず、戸締まりが厳重で家には入れない。
携帯電話も家の中に置いたままである。
玄関先で家人の帰りを待っていると、近所の奥さんから「旦那さん閉め出されたのかしら・・・」なんて噂が立つので裏庭へ回って買ってきたビールを飲みながら待っていたが、2本飲んでも帰ってこない。
I'm left alone, all alone.
である。
待ちくたびれて、もう1本ビール(with つまみ)を買いに行ったのは想像に難くない。(T.T)

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